元禄忠臣蔵@国立劇場
『元禄忠臣蔵』といえば私は溝口健二の映画(1941年)がまず頭に浮かびます。興行的にはかんばしくなかったとかで失敗作なんていうひともいるようだけど、そうかなぁ。私はとても好きな映画です。特に前編は涙なくしては見られない。前進座総出演というのも貴重。当時の前進座の錚々たるメンバーをみていると目眩がしそうです。はぁぁ。
今回はお芝居で。全部で10編あるうちの今回は『江戸城の刃傷』『御浜御殿綱豊卿』『大石最後の一日』の3編。真山青果は他に『頼朝の死』しか見たことがないけれど、どれもこれもセリフだらけ。お互いをどんどん追いつめていくような、セリフで何かを積み重ねていくような、逆にセリフでお互いの間にあるものをどんどん削っていくような。役者にも客席にも緊張感を強います。とっても疲れるのだけれど、今回は見ていて初めてそれが心地よく感じました。セリフがすんなり体の中に入ってくるのだなぁ。全編が心理戦で面白い。
かっちりと作られたお芝居なので、ある程度の役者でないとセリフに役者が負けてしまうのだろうとも思いました。
梅玉、魁春、又五郎、東蔵、そして大好きな歌六が達者なところを見せて適役。綱豊卿と大石内蔵助役の吉右衛門が上からどっしりと押さえます。『綱豊卿』で歌江が元気な姿を見せてくれたのがうれしい。鷹之資が細川内紀役で出てきたときは、客席から「天王寺屋!」という掛け声と拍手がおきました。富十郎が亡くなって1年なんだもんねぇ。吉右衛門が後ろ盾になるようですが、がんばってほしいです。
吉右衛門の内蔵助は大げさなところがあまりなくてよかったです。ラストシーンの、白装束で花道に立つ内蔵助には、やっと最後に自分の手のひらに玉のような何かが残ったという安堵感がありました。それが「初一念」と言う言葉になるのかもしれません。
3年前に国立劇場で見た『大老』もよかったしなぁ。吉右衛門の一座には、新歌舞伎も似合うなぁとしみじみ。
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