2012/05/01

立川志らくの現代映画聖書

図書館で借りてきた。志らく師匠とは年代が同じで、同じような映画を見てきているので、「うんうん」といちいちうなずきながら読みました。
子供の頃はTVのロードショー番組を見て(毎日ように午後9時から映画番組があったのだ)高校生くらいからは情報誌(大阪だったので『ぷがじゃ』か『Lマガジン』)で自主上映をチェックしてはセッセと見に行き、レンタルビデオが始まると、それまで見たくても見られなかった映画を気が狂ったように見まくっていた私とたぶん同じような生活をしていたんだと思う。
24歳くらいの頃だったか、一番よく見ていた時に、見た映画の題名だけを控えていて、それが一年で300本以上あって、一日に一本かぁと、我ながら感心した記憶があります。
それでも、この本に紹介されている映画の中に、見ていない映画がいっぱいあるんだよね。

志らく師匠が好きな映画を思いいれたっぷりに紹介した本です。映画に限らず本でもお芝居でも音楽でも、結局は自分が好きか嫌いかって事に行き着くと思う。それと愛ね。愛があれば、たとえ自分が興味のない世界の話でも聞いているだけで(読んでいるだけで)楽しい。逆に愛情のない評論や感想文は褒めていようがけなしていようが単に下品なだけです。
というわけで、私が好きな映画評は、淀川長治と池波正太郎であります。これからはそこに立川志らくを入れよう。

好きな映画監督、俳優の自分が選ぶベストを紹介しています。最後にお勧め映画も。「へー、そんな映画があったのか」「私はそれは選ばないけどな」「なんでこの映画が入らないのだっ」なぞと、自分の思いと比べるのが楽しいです。
それと、この本のあとがきには、大いに賛同します。
映画好きには本当におすすめ。それと、昔のいい映画(特に洋画)をあまり見た事のない若い世代の人にも。

| | コメント (0)

2011/11/28

映画『冷飯とおさんとちゃん』

つけっぱなしにしていたスカパーの東映チャンネルで(その前にやっていた『警視庁物語』を見ていたのだ)いつの間にか始まっていて、そのオープニングの映像で「おや?」と引きつけられて一気にみてしまいました、3時間。
山本周五郎の三つの短編が原作のオムニバス映画。主役の中村錦之助が、一作目の『冷飯』は武家の冷飯食いの四男坊、二作目は女房から逃げつつなお未練が残る大工、三作目は腕のいい火鉢職人なれど丁寧な仕事は今の時代に合わず貧乏暮らしを余儀なくされている職人を演じ分けます。どれも最初は錦之助が延々と歩く姿から始まります。一作目では何となくおどおどとした様子で緊張いっぱい、二作目では憂いがいっぱい、三作目ではヘロヘロの酔っぱらい。背中でものを言うこのシーンがいいのですよ。
どれも脚本が少々くどいような気もしますが、それが丁寧な演出につながっているとようにも思います。そして脇を固める豊富な役者。ちょっとした役でもそれが積み重なって映画全体の雰囲気を決めていきます。例えば一作目『冷飯』での古書店の主人・藤原釜足、屑屋・浜村純、叔父の花澤徳衛、五千石のお殿さま・千秋実、おしゃべりの三兄・小沢昭一。いいなぁ。女優もすてきです。木暮実千代、入江若葉、三田佳子、新珠三千代、渡辺美佐子、森光子。

70年代に入ってからの錦之助は大げさというか辛気くさいというかどうも好きになれないのですが、この頃の錦之助はグッと気持ちを内に込めた演技が光って本当にいいです。

撮影所のセットを贅沢につかっていて、その美しさにも惹きつけられました。見終わったあといい気分になれる監督は田坂具隆。

| | コメント (0)

2011/02/25

いじわるはステキだ。

今週は仕事した。えへん。風邪ひいた。熱はないし寝込むほどではないけれど、薬のせいか、仕事中、眠くて眠くて。少し早めに退社。

3月のお芝居は、国立劇場をとったけれど、久しぶりに演舞場でこってり楽しむのもいいかなーと、ポスター見ながら思いました。→ここ。特に『伽羅先代萩』。梅玉の八汐が見たい。いじわるが見たい。『伽羅先代萩』って、悪役のわかりやすさが面白いよねー。
わたくし、八代目幸四郎(白鸚)と一緒に東宝にいって、映画に出ていた市川中車が好きで、油断ならない腹黒さがにじみ出てくるような、いじわるな役が本当にステキで、梅玉はそんないじわるな役ができる役者さんだとずーっと思っているんですけど。映画やお芝居はいじわるな人が本当にいじわるじゃないとつまらないよね。

市川中車で一番印象的なのは東宝映画の『待ち伏せ』(1970年)の、物語を影で操る謎の武士。「こいつ、何物?ぜったい悪いやつ」と思わせる、どよよーんとしたところがありました。
ちなみにこの映画、三船敏郎、勝新太郎、石原裕次郎に中村錦之助と、各映画会社(東宝・大映・日活・東映)のスターが勢揃いして、浅丘ルリ子も出て、監督が稲垣浩という、豪華なんだか何なんだかよくわからない映画でした。面白かったけど。

川本三郎『それぞれの東京』を読みました。上野・浅草界隈、郊外(荻窪周辺)、銀座と、一言で東京といっても、風景やその背景が違う街を舞台に、その土地にゆかりのある作家や芸術家を取り上げたもの。これ読んだら、永井龍男や芝木好子、佐多稲子なんて人たちをまた読みたくなったぞ。本棚をさがせばどっかにあるはず。芝木好子はいいよねぇ。

| | コメント (0)

2011/01/19

真夜中に映画をみる(テレビで)。

スカパーの日本映画専門チャンネルで『東京・大阪映画散策』なる特集が放送中であります。→ここ
今はなき東京、大阪の町の風景を、昭和20年代から30年代にかけての日本映画の中に見つけようという企画。
町の風景が画面によく出ているということは、丁寧に映画を作っているという証拠です。まだ見たことのない映画はもちろん、何度か見ている好きな映画の放送も多くてお楽しみ。録画して、毎晩見ています(で、寝るのは真夜中もいいところ)。

今夜(18日)は『羽織の大将』を見ました(1960年・東宝)。大卒で噺家に入門する主人公がフランキー堺、その師匠が加東大介で大師匠が文楽(本物)、兄弟子が小金治。他に歌奴、セリフはないけど、寄席にいる前座がたぶん小益。安藤鶴夫はセリフ付きです。寄席は人形町・末広。当時の落語家の世界がよくわかります(二つ目に上がるときに後ろ幕がつくのね)。寄席の下座のおねえさんが、怖い。目つきがめちゃくちゃ怖い。当時の社会風潮を取り入れた脚本もよくて、おまけに出演者が芸達者揃いだから、面白いよく出来た映画です。地上波ではまず放送できないので、スカパーを契約している落語ファンは必見でございます。映画の中で小金治も少し落語をやるけど、うまいね。

この企画の中で他に見たことある映画だと・・・

『色ごと師春団治』は藤山寛美演じる桂春団治(1965年・東映)。マキノ雅弘らしいテンポのよさとわかりやすい演出で、かなり面白かったです。長門裕之、南田洋子、藤純子などという共演者もいいのですが、特に長門裕之はいいねー。この頃の長門裕之は、本当はとても素直なのに表面は強がっているという少し屈折した青年の役どころがぴったり。ちょっと溜めるような言葉遣いとか。『にあんちゃん』もよかったしなぁ。

『銀座化粧』(1951年・新東宝)は子供を抱えた年増のホステス役の田中絹代はもちろん、ご近所の清川玉枝&柳永二郎の夫婦が絶品。

『下町』(1957年・東宝)は山田五十鈴&三船敏郎という超豪華配役のたぶん添え物映画だと思うけれど、これまた味わい深い大人の映画です。今のドラマも60分でこのくらいの事をしてみぃと言いたい。

『わが町』(1956年・日活)は辰巳柳太郎がもう、イヤんなるくらい辰巳柳太郎です(笑)。長屋の隣りに住んでいる噺家役の殿山泰治がとてもよろしい。川島雄三監督なので、もちろん小沢昭一も出ています。

『その場所に女ありて』(1962年・東宝)は、まだ女が働くことが珍しい時代の司葉子のBG姿がすてき。司葉子って、クールできれいで本当にすてきなのよ。みんな忘れてる(知らない)と思うけど。鈴木英夫監督のシャープな演出と司葉子のクールさがぴったりマッチした名作。

『大阪の宿』(1954年・新東宝)。これはいい映画です。私の大好きな映画のひとつ。同情なんかでは全然解決しない生きることの哀しさ。いくらジタバタしても太刀打ちできない現実。でも人を思いやる同情の心が、現実の解決にはならなくても人の心は救うのだという示唆に富んだ映画らしい映画です。

・・・やっぱり映画はいいね。
ここんとこ、残業続きで、映画館にも行けないけれど(どうしてもチケットをとってある落語やお芝居が優先になるので)、もっともっといい映画を見なければ・・・と思いました。まだまだ知らない事が多すぎるよ。

| | コメント (0)

2010/12/31

訃報:高峰秀子

年末といってもついダラダラと過ごしてしまう我が家。本当は掃除もせねばならぬのですが、いったいどこから手を付ければいいのかわからず(すいません)。
夕食の年越しそばを食べながらニュースを見ていたら高峰秀子が亡くなったというニュースにびっくり。ちょっと気が抜けてしまいました。

もうお歳だしね、仕方がないといえば仕方がない。映画会を引退して何年にもなるし、表に出ることもほとんどないから、今の若い人、映画に興味のない人には「誰それ?」って感じなんだろうけれど、デコちゃんは映画史に残る大女優で、これで映画の一つの時代が終わったなーという気がします。戦前からの映画俳優というと、存命なのはもう原節子と山田五十鈴くらいないんじゃなかろうか。

デコちゃんの代表作といえば何になるんだろう。『浮雲』『二十四の瞳』『喜びも悲しみも幾年月』『カルメン故郷に帰る』。
私は成瀬巳喜男と組んだ『稲妻』『女が階段を上がる時』が好きです。あと戦前の東宝映画『四つの結婚』のデコちゃんも可愛らしかった。デコちゃんは四姉妹の末っ子で、三人の姉が入江たか子、山田五十鈴、山根寿子の絶対あり得ない美人揃いで見ていて越がくだけそうになりました。かわいいといえば『秀子の車掌さん』もよかったなぁ。

合掌

| | コメント (0)

2010/11/18

晩ごはんを食べながら『沓掛時次郎・遊侠一匹』を見る。

夜に予定がないときは残業しているので、ここんとこずーっと帰宅は10時過ぎであります。それから晩ごはん食べて一息ついたら日付がかわっています。太るはずだよねー。
今夜は晩ごはんを食べながら録画しておいた『沓掛時次郎・遊侠一匹』(1966年・東映)を見ました。何度見てもいい映画ですなー。この頃の錦之助は体がしまっていて男気があって颯爽としていて、芝居もそんなにくどくなくて本当にいい。加藤泰監督も一番のってる頃じゃなかろーか。映画産業はもう斜陽でしたが、それだから生まれたような、撮影所で何とかいい映画を作ろうという気持ちが感じられてよろしい。ホリゾントの空がきれいだよ。

渥美清が出ていて、もう寅さんをやっていた頃だけど、その寅さんがお女郎買って、最後は無惨に斬り殺される・・・っていうのは今からみれば貴重かも。お女郎が三原葉子で、ひたすらお芋を食べてる。同じ加藤泰監督の『緋牡丹博徒 お竜参上』だったかに出た時も、ひたすら蜜柑を食べてたなー。

時次郎と斬り合う六ッ田の三蔵役の東千代之介もいい。生々しい感じがね。池内淳子もヤクザの女房なのに崩れたところがなくて映画をキリリと立たせてるし、何と言ってもこの映画は時次郎(錦之助)とおきぬ(池内淳子)のラブストーリーだからさ。

改めていい脚本だなぁと感心しました。
錦之助の殺陣はリアルで迫力があって動きに無駄がなくて見惚れます。
時次郎が宿屋の女将に自分の気持ちを吐き出すシーンは名場面。降り続く雪からの導入部分からワンカットで6分強。撮る監督がエライのか、それに応える役者がエライのか。

| | コメント (0)

2010/10/18

今夜も映画。

サクサクっと仕事を片づけて映画。今夜は雷蔵の『弁天小僧』でありました。「白波五人男」に「河内山」をふりかけたような筋立てだね。
『弁天小僧』を映画館で見るのは初めて。大画面のフィルムで見ると、大映京都撮影所のセットのすばらしさがよくわかります。丁寧なんだよ。小物一つ一つにリアリティがある。使い込んだ燗どうことかね。あぁいう小物、倒産したときに全部処分しちゃったんだろうか。

雷蔵の姿と口跡のよさ、勝新の目の力、伊藤大輔お得意の瓦屋根に無数の御用提灯ユラユラと見どころいっぱいで楽しみました。最後はちょっとうるうるしちゃったよ。

新文芸座のロビーにこれからの特集上映や他の映画館のパンフレットがあったのでもらってきた。
小林桂樹特集の後は中村錦之助。ぜったい泣いちゃう『瞼の母』と『沓掛時次郎』はまた見てみたいなぁ。
シネマヴェーラでは市川崑。神保町シアターでは小津安二郎。『淑女は何を忘れたか』は見たいですー。桑野通子が好きなんだー。トレンチコートに帽子を斜に被ってさっそうと歩くシーンが、いかにもモガって感じでいいんだ。

これからスカパーで『大魔神』を見ます。これ見たら夢に大魔神が出てくるのだ。こわいよー。

| | コメント (0)

2010/10/16

池部良が亡くなったけど。

朝のワイドショーを見ながら夫と、池部良が亡くなったこと、あんまりニュースにならなかったねーと話しました。チリの鉱山の救出劇とか、他にもいろいろニュースがあったし、ほとんど地上波を見ていないので、気が付いていないだけかもしれませんが。最近の池部良はエッセイストとしての方が有名だろうし、池内淳子のようにすぐに頭に浮かぶテレビドラマの代表作がなかったからかもしれません。

14日の日経文化欄に山本富士子が追悼文を書いていて、ちょっとうるるとしてしまった。

池部良も映画俳優でした。私が思い浮かぶのは『雪国』『けものみち』。『トイレット部長』なんてのもある。やくざ映画はあまり好きではないので(お竜姐さんは大好きだけどさ)、昭和残侠伝は見てないけど、後年、脇役にまわってからの池部良って、シブイ存在感で記憶に残る、同じく脇役のアラカンに近い雰囲気があるよーな気がする。

加賀まりこがインタビューで「あれは、監督さんと池部さんの映画です」と言っていた『乾いた花』を録画したまま、まだ見ていないので、休みの時にゆっくり見よう。

| | コメント (0)

2010/10/15

今日も仕事帰りに・・・

映画を見て変えるつもりが結局仕事になってしまいました(泣)。でも今夜は『炎上』だったので、またどっかで見る機会があるだろうし(市川崑の代表作の一本でありますしね)、何回か映画館で見てるし、DVD持ってるし。市川雷蔵が時代劇映画だけの人だと思ったら大間違いだわよ。『炎上』『ある殺し屋』『陸軍中野学校』を見ていただきたい。
で、帰宅後、DVDで眠狂四郎の『炎情剣』を見てしまったのであります。帰宅した夫に「昨日見てたのと同じ映画じゃないかー!」と怒られましたが。だって好きなんだもん。

| | コメント (0)

2010/10/14

市川雷蔵の特集が始まったので・・・

昨日は早めに仕事を切り上げて池袋へ。映画館に行く前に池袋演芸場に寄って余一会の前売り券を買いに行きました。白酒師匠の会なのだ。でも座席分はすでに売り切れで立ち見のみ。うげげ。
夫に電話すると「それでも行きたい・・・」と言うので買いました。私はどうしようかなぁ・・・としばし迷うも後で「楽しかった」と言われるのがしゃくなので、結局行く事にしました。当日はスニーカー履いていかねば。

池袋の新文芸坐へ。19時からの『薄桜記』を見ました。DVDを持ってるので、自宅では何度も見ていますが、映画館で見るのは初めて。当然のことですが、やっぱりスクリーンで見るのはいいですなー。
映画は忠臣蔵外伝で、とある旗本夫婦の悲劇に中山(堀部)安兵衛が狂言回しとなってからむお話し。旗本丹下典膳を雷蔵、中山安兵衛を勝新が演じます。
前半の格式ある旗本としての凛とした姿から後半、浪人し荒んだ様子を見せる雷蔵にほれぼれ。この映画に限らないけれど、どんな役柄でも品格を失わないのが雷蔵の大きな魅力であります。
プログラムピクチャーでありながらこのレベルの高さ。森一生の代表作ですね。
帰宅後も興奮冷めやらず。DVDで雷蔵の眠狂四郎をまた見ちゃったでございますわよ。

| | コメント (0)

より以前の記事一覧