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2011/02/12

二月花形歌舞伎『女殺油地獄』@ル テアトル銀座

Kabuki_201102_
10日。18:30開演なので、会社帰りに行けるのがうれしい。休憩時間を挟んで2時間半、小ぶりの劇場での、このコンパクト感が何ともいえずいい感じ。舞台は少し嵩上げされていて、なんと回り舞台が設置されていました。短い花道も。

『女殺油地獄』はよく演じられる二幕の前に『野崎参り屋形船の場』、お吉殺しの後に『北の新地の場』『豊嶋屋逮夜の場』がついて、これで全段らしいです。お吉殺しのあとに、与兵衛が捕まるところまでを出すのは興が削がれるという感想もあるようですが、私は、この殺人事件に対するまわりの人たちの怒りと悲しみ、それに頓着できない与兵衛のどうしようもなさ加減がよく出て、お芝居が立体的になったし、またより現代に通じるものになったと思います。
だって、ありそうじゃないですか。家は堅い商売をしていて、父親は継父だけれど両親そろっていい人だし、兄弟みんなよくできて、不自由なく育ったのに、次男坊だけが働きもせず、女遊びにうつつを抜かし、まわりの意見は馬耳東風。挙げ句の果てには高利の街金に手を出して、借金に追われるわ、家は追い出されるわ、困って幼なじみの気のいい女の子が嫁いでいる商店に上がり込んで、金の無心をするも断られたから殺して金を盗んで逃げてしまう・・・って、明日のワイドショーのトップニュースになってもおかしくない。

与兵衛は今もいるよね。ワイドショーでコメンテイターが眉間にしわを寄せて何か言っても、普通の常識では理解できない事件の犯人。
お吉殺しの場で、油まみれになってのたうち回りながら殺されていくお吉が「(幼い子供を残して)死にたくない、死にたくない」と言うのに、与兵衛は「わしは自分がかわいい」と言う。それが全て。だから、凄惨な殺人場面から舞台は一転、パッと明るくなって、あんな事件をおこしたというのに、与兵衛はまるで他人事のように遊び暮らしていて、馴染みの芸者といちゃいちゃする。お吉の家の前を通って(!)、中で三十五日の法要が行われているのを知って、線香を上げさせてもらいたいと中に入る。悪事が露見して捕まって、お吉の夫の嘆き悲しみ、それでも弟をかばう兄の姿を見ても、与兵衛はニヤリと笑っていく。決して狂っているわけでもないし、殺人鬼というわけでもない。でも今の自分しか愛せない。きっと与兵衛は最後まで、自分の罪を理解できずに、全てを他人のせいにして(例えばお吉を殺したのは、自分の話しを信じないで、金を出してくれなかったからだ。お吉が悪い)処刑されるのだろうね。

染五郎の与兵衛は、育ちの良さとダメダメさ加減がよく出ていました。(この通し上演での与兵衛は)当たり役になるでしょうね。きっとこれから何度か演じる役だろうけれど、そのたびにどう変わっていくのかが楽しみ。隣りに座ったカップルが幕内に仁左衛門の与兵衛と比べていましたけど、比べる相手が違う。花形歌舞伎だもん。こういう「ダメダメ」で「悪」の雰囲気をたっぷりと持った役者さんです。
亀次郎のお吉は意外やあっさりとした印象。脇役が充実で、なんといっても与兵衛の母親、おさわ役の秀太郎が最高。こんな息子を生んだ悲しみと、それでも愛してやまない母親の気持ちが、舞台にいるだけでにじみ出ていて、『豊嶋屋油店の場』での父親役彦三郎とのやりとり、二人でとぼとぼ帰っていく場面なんて涙です。
また与兵衛の兄役の亀鶴もよかった。私、この役者さん、大好きなんです。出番は少しだけれど「真面目なだけの面白くないやつ」ときっと与兵衛に陰口をたたかれているんだろうなと思わせる雰囲気が、バタバタと登場する場面一つにもよく表れていて、そんな兄が石を投げられる弟をかばうところなんて、思わずグッときちゃいました。
特設の回り舞台を効果的に使った場面転換も見どころ。わかりやすいお芝居だし、おすすめです。
それにしても、江戸時代にこういうお芝居を書いてしまうのがすごいね。悪人は時代に関係ないってことだわねー。


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コメント

19日に観に行きます。本当なら「ネタバレ」的なものは、事前に読んではいけないのでしょうが、今回は話の「キモ」がは分かって良かったです。当日を楽しみにしています。

投稿: 梅薫庵 | 2011/02/12 15:39

この劇場は、こじんまりとしているので見やすいし、椅子は座りやすいし、下手側の通路にロッカーがいっぱいあるし、吹き抜けのロビーは開放感があるし、いいですよ。
花形歌舞伎の、こういう演目には合っていると思います。
19日に行かれるのですね。楽しんできてくださいねー。

投稿: あやこ | 2011/02/13 12:49

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