« 忘年会 | トップページ | 訃報:高峰秀子 »

2010/12/30

快楽亭ブラック『歌舞伎はこう見ろ!―椿説歌舞伎観劇談義』

20101230_
私はブラック師匠の落語はあまり好きではないけれど、映画と歌舞伎の話しは大好きであります。それは自腹で時間を割いて映画やお芝居を見ている観客の視線がきちんとあるからです。見ている映画の本数も、歌舞伎の舞台もハンぱではない。まぁ、歌舞伎に関しては素人でも「東京の舞台は全部みている。たまには2,3度見る」レベルの人がうじゃうじゃいるので当然ですが。とにかく場数をこなすというか、見ていないとお話しにならないのが映画やお芝居の評であるし、それも映画だけしか見ていないというのも困りもので、だいいち、お芝居をみていないと忠臣蔵映画なんてさっぱりわからんでしょ。

『歌舞伎はこう見ろ!―椿説歌舞伎観劇談義』はブラック師匠による「歌舞伎の見方」。古典芸能、芸術として神棚にあげられてしまいそうな歌舞伎をグッと私たちの舞台へ引きずり落とす作業のような気がします。神棚にあげられたら歌舞伎の将来はもうないでしょう。型の伝承だけで中身がなくなってしまう。それは困るんであります。なぜなら面白いから。確かに敷居は高いけど、それを越えちゃうとこんなにきらびやかで、きれいで、くだらなくて、知的好奇心を満たせてくれるものは、そうはないです。どこが面白いのか、その肝がわかれば歌舞伎の見方が変わってくるし、セリフも義太夫も長唄もスッと頭に入ってくる。慣れとは恐ろしいものですな。逆に、その肝、歌舞伎の面白いところがわかっていないお芝居は、つまらないのであります。

ブラック師匠は、歌舞伎の面白さ(見方)を紹介しつつ、おもしろくないところはバッサリ切る。それが理屈に合っているから気持ちいい。
例えば大好きな当代中村勘三郎に対しても、「同志よりも客にやさしい、という一点が加われば・・・」というところに、大きく頷いてしまう人も多いのではないかなぁ。歳をとった歌右衛門の「籠釣瓶」の八ツ橋をはっきり醜いと書いたのを読んだのは初めてかも。吉右衛門も、巧いけどセンスがないというところには、吉右衛門ファンの私もうなずいてしまう。「インテリは役者や芸人の敵だ」というのもその通り。みんなこっそり思ってはいるんだけどね(^^)。

「文七元結」についての一文は、落語ファンも読んで損はないです。最後にはブラック版落語の「七段目」のおまけつき。
落語でもこういう感じの本があればいいのになぁと思いました。私が知らないだけかもしれないけど。
この本と同じような「落語の聴き方」って事になると、お気に入りの噺家さんの贔屓のひきたおしになってしまうように思います。世の中に噺家という人は何百人といて、それがみんな個人芸で、毎日違う高座で、全部聴くのは物理的に無理な状態では、特定の噺家に片寄ってしまうのは仕方がないかもしれないけれど。なーんか、今の落語ファンって、ちょっと息苦しくないですか?と感じてしまうこと、あるんですよねー。

何にせよ、お薦めの一冊。下ネタ満載だし、受け付けない人もいるでしょうけどね。

|

« 忘年会 | トップページ | 訃報:高峰秀子 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 忘年会 | トップページ | 訃報:高峰秀子 »