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2010/12/12

12月大歌舞伎(『摂州合邦辻』)@日生劇場

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11日。日生劇場は初めて行きました(ここ)。オフィスビルの中にあって、少々殺風景な入り口、洋風(?)な劇場内の雰囲気はいつものお芝居見物とは違って少し戸惑いましたが、目が慣れてくると全体に昭和の雰囲気むんむんで、なかなかすてき。いたるところに座るところがあるのも好感が持てました(赤いマットがかわいらしい)。曲線を多用したホールは温かみがあって繭の中にいるような。椅子も座りやすく見やすかったです。難を言えばお手洗いの混雑ぶりとシートピッチの狭さでしょうが、それは古い劇場の仕方のないところなのかも。

天井が高く真四角な舞台を歌舞伎らしく横長にするために、屋根をつけたりいろいろ工夫をして歌舞伎の画面を作っていました。花道もすっぽんもあり。コンパクトな感じで、今回のような演目なら歌舞伎公演に合っているように思えました。役者さんの声もよく聞こえました。

  ・通し狂言 摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)
     序 幕 住吉神社境内の場   
     二幕目 高安館の場       
     同庭先の場   
     三幕目 天王寺万代池の場   
     大 詰 合邦庵室の場

  ・達陀(だったん)

何と言ってもお楽しみは『摂州合邦辻』の菊之助演じる玉手御前(筋はここ)。3年前に籐十郎の玉手御前で「合邦庵室の場」だけを見たことがあります。義理の息子に恋をするというただでさえ大変なお話しが、徐々に壮絶な展開になってきて、歌舞伎を見始めてまだ間もなかった私は「こんな話しもアリですか・・・」と呆然とした記憶があります。籐十郎の玉手御前は迫力満点の上に貫禄もあって、どちらかというと「真実の恋」よりは「お家のための偽りの恋、母性」という気持ちを強く感じました。そこを若い菊之助はどう演じるのか。

今回のお芝居を見て、玉手御前はやっぱり俊徳丸に恋をしていたと思いました。当然秘めたる気持ちだったのが、お家騒動で俊徳丸の命が狙われていると知って覚悟が決まった。何とかせねばと一人で計画をたてながら、やっと自分の気持ちを表に出せるという喜びにひたっていたのではないでしょうか。だから俊徳丸に迫る場面は、本当の玉手御前。でも最期に玉手御前は、これは家のための計画、偽りの恋だと告白します。それはのちのち俊徳丸や許嫁の浅香姫、自分の両親に余計な負担を与えないためだと私は思います。一瞬でも恋の炎を燃やすことができた、俊徳丸の役にたてた、(自分の生き血を飲ませて俊徳丸を助けるので)彼の体の中に自分は生き続けると、玉手御前は満足して死んでいく。最期の菩薩のような表情が印象的でした。

今回は通し狂言なので全体像がよくわかりました。梅枝の俊徳丸、右近の浅香姫は心配になる場面もありましたが、菊之助の玉手御前とのつりあいを考えると、このくらいの若手じゃないとおかしいし、二人とも「合邦庵室の場」はよかった。
菊五郎の合邦も、元武士という誇りをもちつつ今は市井の気のいい坊主という雰囲気があり、情愛たっぷりでよかった。時蔵の羽曳野はじめ、他の脇役も充実していました。
でもやっぱり一番は菊之助の玉手御前。美しく品があります。そんな奥方が義理の息子に向けるゾッとするような色っぽい視線。ちょっとマズイんじゃないですか。

「合邦庵室の場」はすばらしかった。菊之助の玉手御前は片袖をちぎって顔をかくして出てきます。籐十郎はそこは頭巾だったと記憶しているけど、この方が色気があって、俊徳丸を追ってきた気持ちが出ると思いました。「かかさん・・・」と戸を叩く時の声の切なさ。両親が理を尽くしていさめても、義理の息子への恋心を隠さず、俊徳丸と浅香姫を見つけてからは、夜叉のようになり、最期はやさしい表情で死んでいく玉手御前。長いお芝居の全てがこの一点に向かって収縮していきます。
古典といいつつ、これはとても現代的なお話しではないでしょーか。
いやはや。機会がある方はぜひご覧になってくださいまし。菊之助の美しさを見るだけでも値打ちありますわよ。
今回は幕見もあるようなので(ここ。)仕事帰りにもう一度見たいなぁ。

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