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2010/08/09

内田百けん『立腹帖』@ちくま文庫

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往復の通勤電車の中は貴重な読書タイム。借りていた本は図書館に返しちゃったし、買って読みたい本もないし・・・で、目に付いた文庫本をカバンに入れて出かけました。久しぶりに読む百鬼園先生の随筆。

数年前にちくま文庫から「内田百けん集成」が出ました。全20巻だったかな。毎月買って読むのが楽しみでした。いろんなテーマでまとめられていたなかで、第2巻の『立腹帖』には阿呆列車以外の鉄道にまつわる随筆が収められています。全巻の中でも特に好きな一冊。

百鬼園先生は鉄道好きで、有名なのは阿呆列車シリーズですが、私は何気なく書かれた随筆の中に出てくる鉄道の風景も好きです。特に『立腹帖』の中には好きな随筆がいっぱい入っているので、どこから読んでも面白いし何回読み直しても楽しい。
上りの特別急行列車の食堂車での出会いを書いた『車窓の稲光り』、旅先の青森で宮城検校との思い出『旅愁』、他にも『偽物の新橋駅』、『千丁の柳』などなど、どれも味わい深いです。中でも『時は改変す』では、鉄道八十周年を記念して東京駅の名誉駅長になった百鬼園先生が、大好きな特急「はと」の出発を見送るのが切なくつらく、ついに駅長の職務を放擲し、「はと」に飛び乗って熱海に行ってしまう顛末が書かれていて面白いです。

キリリとエッジの立ったきれいな文章にはユーモアが漂います。百鬼園先生が真面目になればなるほど面白い。そして文章の端々に、心の底を針の先でツンツンつつくような鋭さもあって、読後感が何ともいえません。
感受性豊かで癇癪持ちでわがままで常にプンプン怒っていて借金だらけで、でも百鬼園先生が一流の文章家としていられたのも、高度成長までの日本だったからで、だんだん窮屈になっていく今の時代に百鬼園先生がいたら、アッという間に潰されてしまうだろうなぁとも思いました。

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