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2008/04/29

鉄ちゃん的『張込み』の見方。

久しぶりに夫と映画を見に行きました。池袋の新文芸坐。むかし、「新」の付く前の文芸坐には夫もよく通ったそうな。随分変わったなぁとびっくりしていました。

『張込み』1958年:松竹 監督:野村芳太郎、脚本:橋本忍。

(以下ネタバレあり)東京でおこった強盗殺人犯を追って警視庁の刑事が二人(大木実、宮口精二)、佐賀へ向かうところから映画は始まります。追いつめられた犯人が、昔付き合っていた女(高峰秀子)に会おうとするのではないかと、彼女を張り込みに行くのです。女は今は3人の子持ちの銀行員の後妻になっていました。吝嗇家の夫に従い、毎日判で押したような生活を淡々と続ける女。じりじりと暑い佐賀の町を背景に、サスペンスと独身の若い刑事の恋愛問題を巧みにからめた脚本が秀逸。もちろん面白い、いい映画ですが、これがまた鉄道ファンが喜ぶシーンが満載なのでした。

オープニングシーンが楽しい。横浜駅から鹿児島行きの急行列車に乗り込む二人の刑事。満員の三等車は通路まで人がいっぱい。暑い車内、扇風機には「日本国有鉄道」の文字。東海道、山陽道をひた走る列車を牽引する電気機関車、蒸気機関車がころころ変わりながら出てきます。撮影所近くの路線でお茶を濁しているわけではなく、ちゃんとロケーションしているので見応えたっぷり。停車駅でお弁当やお酒を買うようす、ホームで待機する売り子さんたち、暑い車内でシャツ1枚の裸同然の姿で過ごす乗客、美しい瀬戸内の風景。一昼夜かけて、やっとの思いで佐賀に到着します。昔の佐賀駅がモダンですてき。

この映画は、20日間に及ぶ佐賀ロケーションを敢行したとか。佐賀市内の風景はもちろん、当時の生活を思わせるシーンがたくさん出てきて(夕方になると沿道に市がたって、買い物客でごった返している場面とか)記録としても貴重。

後半、犯人が追いつめられていくシーンでも、蒸気機関車がいくつか出てきます。一つは久大本線、もう一つは宮原線かと。

ラストシーンが感涙もので、犯人を東京へ連行する二人の刑事が佐賀駅のホームを歩いていく、その姿に、佐賀から東京までの全停車駅の放送が重なります(オープニングシーンに対応しているわけ。彼らは同じ道のりを戻っていくのです)。列車は急行西海。放送が終わると同時に列車が入線。そしてゆっくりと列車は発車していきます。最後は黛敏郎の音楽。このシーンの佐賀駅が美しい。私なんか、このラストシーンが見たくて今日は映画館に行ったようなもんだ。(オープニングシーンも楽しみでしたが)

鉄道から少し離れて。この映画をみて感じるのは「距離感」。東京と佐賀の地図上の距離、都会と地方との距離、夢と現実の距離、男女の距離。例えば、東京から佐賀までは満員の三等車に一昼夜揺られて行く所であり、希望を持って田舎から東京へ出てきた青年は夢やぶれて犯罪に手を染めてしまい、別れてから3年の間に女は結婚し人妻になっている・・・。
その中で唯一、主人公の若い刑事が、距離を持ち始めていた恋人に歩み寄って結婚を決意します。東京へ戻るのに比例するように。

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