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2007/08/06

仲蔵狂乱

20070806_
松井今朝子『仲蔵狂乱』読了。この私が(読むのが遅い)一気にほぼ2日で読んじゃいました。18世紀の後半、江戸で大人気だった歌舞伎役者、初代中村仲蔵のおはなしです。

孤児だった仲蔵が、稲荷町とよばれる最下層の役者からはい上がって、やがて座頭を務めるまでになります。梨園の外からやってきた何の後ろ盾もない役者がトップに上りつめるのはどれだけ大変なことか。いじめ騙され陥れられ、悔しい思いもし、一度は自殺までします。でも仲蔵は、あらゆる山も谷も何とか乗りこえ、やがて当代一の役者だと言われるまでになるのです。持って生まれた人のよさから(それは孤児だった自分が生きていくために身につけざるを得なかった処世術でもあるのですが)「甘いよ」と言われながらも、策をろうしてまで上に上がることはできない仲蔵。彼の魅力もさることながら、この小説が断然おもしろいのは、仲蔵のまわりにいる人たちや、当時の芝居の世界のあれこれが、実によく書かれているところだと思いました。

勘三郎、団十郎、幸四郎、富十郎・・・と今でもお馴染みの名前がどんどん出てくるし、仲蔵贔屓のお大名、仲蔵と身分を越えて深く交わることになる武士、三浦。その他おおぜいの登場人物が本当に個性的で、おまけに彼らはただ出てくるだけではなくて、おはなしの中でそれぞれの人生を歩んでいるのです。そこに当時の社会風潮、風俗、出来事がうまくからまっているので、読みすすんでも全然あきないのだ。作者は仲蔵を軸に芝居の世界のあれこれを書きたかったのかなー。

この本は10年前に世に出たもので、「何を今さら・・・」って笑われるかもしれないけれど、今の私には旬のお話しだってことで。芝居好きの方もそうでない方もぜひぜひ。おすすめです。

あー。こんなの読んでたらまたお芝居を見に行きたくなりました。8月の歌舞伎座は・・・夜の部は『裏表先代萩』ですかー。見たい。

それからこのお話し、映画にしても面白いと思いました。

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コメント

この小説のなかに出てくるところの、仲蔵が先輩役者の口では言えない箇所を嘗めさせられるというのは有名な実話であります。
演劇、芸能の世界の人間ドラマは、映像化しても凄みのある題材が多いものの、現在では、そうした社会に生きる人間を演じる素養のある俳優が少ないので、具体化しないのだそうです(因みに私も一人では和服が着られません…)。

ところで、永六輔氏が芸界のエピソードを収集した「その世界」シリーズも好著で、仲蔵のことも出てきます。
現代では馴染みのない名前も多く、差しさわりのある表現も多いので、復刊されずにいましたが、最近、岩波クラッシクスから、第1作目の『芸人その世界』がほぼ初版のままの内容で復刊されています。
エピソード集なので、短い時間を活用して読めますので、機会があれば、こちらも是非。

投稿: Ryo | 2007/08/10 13:00

私も一人では着物が着られません(^^)。
やっぱり、こういうのは「慣れ」ですよね。所作などは生活の中に根づいたものでないと、一朝一夕に身に付くものではないし。
時代劇で歌舞伎役者がもてはやされるのは、そういう基本が自然と身についているからでしょーね。

投稿: あやこ | 2007/08/12 23:47

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