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2007/02/04

『夜の河』・・・よかったぁ。

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昨日は池袋の新文芸座で始まった『名匠・吉村公三郎の世界』の初日。『夜の河』(1956年・大映)と『偽れる盛装』(1951年・大映)の二本立てを見てきました。15:45からの回に行ったのだけれど、館内はほぼ満員。座れないのでは・・・と少々焦りました。年輩の方が多いのは仕方ないか。でもなー。こういう映画、もっと若い人もみればいいのになぁ。私が大阪の自主上映にせっせと通っていたとき(20年前)は、古い映画でも私と同年輩の学生風の人が結構いたんだけど。

さてさて。今回は京マチ子主演の『偽れる盛装』がお目当てで、山本富士子主演の『夜の河』はおまけだったのです。が!『夜の河』がよかった。すばらしかった。山本富士子がすんごーくよかった。彼女の出世作になったというの、わかります。

京都で父親と小さな染め物屋をしている染色作家(という地位は当時まだなかったでしょうけれど)舟木きわは、もうすぐ30歳だというのに結婚する気がないのか仕事に打ち込む日々。取材先の法隆寺で、きわは、大学教授・竹村(上原謙)と彼の娘に出会います。惹かれ合った二人は、やがて深い付き合いになっていきます。ある日、竹村の娘から、彼には長患いの妻がいる事を知らされ、きわは衝撃を受けます。だけど別れられない。切ない。
お忍びで出かけた白浜温泉で、竹村は妻の事をきわに話します。彼女はもう長くはないという事を・・・。妻の死をまるで待っているような竹村の言葉に違和感を覚えるきわ。やがて竹村の妻は亡くなり、最初は竹村との付き合いを反対していた家族は、これできちんと結婚ができると言い始めます。竹村も・・・。「それは違う」と、きわは、竹村と初めて結ばれた宿の一室で彼に別れを告げるのでした・・・

いやぁもう、少々気が強くて、自分をしっかり持った京女を演じる山本富士子がもうすばらしい。ガンガン仕事をするのだ!とがんばる姿、竹村を知って女に変わっていく姿、彼の妻の存在を知り、だけど別れられないと泣く姿、そして妻の死を待つような竹村の言葉に心が離れていく姿。竹村は、なぜ別れ話を切り出されたのはわからないと思う。たぶん、一生わからんでしょう。きわの家族にしてもそう。普通に考えれば、障害(竹村の妻)がなくなったのだから大手を振ってお付き合いできるのだ。結婚もできるのだ。「でも、それは違う。私はそんな女じゃない」っていう女の気持ち。意地ではなくて自分で自分が許せるかどうか。「あ、違う」とどこかで違和感を持ってしまえば、その恋はその時点で終わりなのよ。

吉村公三郎は『足摺岬』の印象が強くて(暗い映画であった)、なんとなく暗い映画を撮る人ってイメージがあったのだけれど、女性映画の大家と呼ばれるのがわかりました。それも気持ちの揺れを言葉ではなく映像で表現するところなんてしびれました。例えば赤は染めないと言っていたのに、急に赤を染めはじめるとか。
初めての情事のあとで、きわがお風呂に入るシーンがあるのですが、これがもう「おいおい、いいのかー。そんな所まで追っかけて」と思わずつっこみそうになりました。いやぁ、裸がババーンのベッドシーンより、よっぽど生々しいシーンでした。こういうの、なかなか撮れないよ。
他にも、山本富士子が着る着物がどれもモダンですてきだし、小物も結構気が利いていて、風俗映画として見てもおしゃれ。
美術監督は、先日亡くなった内藤昭。彼の対談本『映画美術の情念』に、この映画の事があって、それを読んだ後だったので、ますます興味深く見る事ができました。
脚本は田中澄江(さすが!)。カメラは宮川一夫。

もちろん、併映の『偽れる盛装』もいい映画でした。泣ける。
リメイク流行りの昨今。どうせリメイクするなら、こういう映画をリメイクしてみぃ!と言いたくなりますが、一歩間違えばしょうもない不倫ドラマになってしまう。簡単そうで難しい映画だと思うよ。

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コメント

こんにちは。

>。「あ、違う」とどこかで違和感を持ってしまえば、その恋はその時点で終わりなのよ。

そうなのですかぁ、女心って…
この映画を見てませんので、なんともですが、このブログ見たって、どうしたって、男にはさっぱりわかりませんです。
ちんぷんかんぷんだなぁ。

ただ、今の女性もそうなのですかねぇ、こんな場合。
昔のニッポン女性だからじゃないのぉ?!

投稿: おぢ | 2007/02/05 14:32

おぢさま、こんばんはー。

うーむ。わかりませぬか。
女は一度「あ、だめだ」と思って気持ちが切れると、あとは何をどう言われても元には戻れないってとこ、あると思うのでありますよ。

男と女、お互いわかりあえたら、それはそれで面白くないなーと思ったりして・・・と話しを強引にまとめてしまいました(^^)。

投稿: あやこ | 2007/02/07 01:12

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