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2006/09/10

『血槍富士』@内田吐夢

うー。昨夜はちと飲みすぎました。久しぶりの友人ともども7人で、この間行き損ねた『玉椿』へ。楽しい時間についつい飲みすぎてしまい、帰りの電車ではうまく座れたのはいいけれど、つい寝過ごしてしまい、あやうくタクシー代に○万円使うはめになるところ。危なかったー。

おかげで今日は一日ごろごろ寝てすごしました。ゴロゴロ。

昨日は池袋の新文芸坐へ。『血槍富士』『十兵衛暗殺剣』を見に行きました。『血槍富士』(1955年・東映)は内田吐夢監督、片岡千恵蔵主演の名作といわれている一本。内田吐夢が13年のブランクを経て撮った復帰第一作で、クレジットに協力者として、小津安二郎や伊藤大輔なんていう名前が出ているのを見ると、内田吐夢の復帰に多くの仲間の力添えがあったことがわかります。評判通りのいい映画でした。

槍持ちの権八(片岡千恵蔵)は忠義一筋の男。中間の源太(加東大介)と共に、お役目で江戸へ向かう主人のお供をしています。旅の途中で様々な出会いと別れがあります。時代劇版ロードムービーといったところ。それで終われば「あぁ、よかったね」だけの映画なんですが、主人が、源太と共に入った居酒屋で、女を連れてやってきた酔っぱらいの武士たちに斬り殺された事でにわかに緊張感を帯びてきます。権八は主人と源太の亡骸を前に憤怒の形相となり、自分がここまで大切に持ってきた槍を手に一人、また一人と武士をつき殺していくのです。この場面がすごい。伊藤大輔が撮った大川橋蔵主演の『下郎の首』を思い出しました(こっちも最後は堪忍袋の緒が切れた下郎が槍をふりまわす大ちゃんばら)。

『血槍富士』も『下郎の首』も戦争に行った監督の「人間らしい生き方とはは何か」という問いかけが強く出た映画だと思います。
『血槍富士』では、人はいいけれど酒乱の気がある主人が、旅の途中で身分は低いけれど人間らしい生き方をしている人たちと出会い、また威張るばかりで人の気持ちなど全然考えていない武士の姿を目の当たりにして、「身分の違いとは何だろう」という事を強く感じていきます。そして居酒屋で、中間の源太と共に飲んでいるところを武士達になじられ、主人は刀を抜くことになるのです。

映画は、おとがめなしとなった権八が、主人と源太の遺骨を首からかけ、旅立つシーンで終わります。自分も槍持ちになりたいと、今まで権八についてきた少年を、権八は追い返します。少年に権八の気持ちが分かるはずがありません。「行っちゃったよぉ」と泣く少年の後ろ姿。何かが終わったあとの、人が生きていく虚しさを感じさせるラストシーンでした。

関係ないけど、『十兵衛暗殺剣』の前に予告編があって、いきなり「映画は大映」の文字がババーン!と出てきてびっくらぎょうてん。13日に上映予定の『座頭市物語』の予告編でした。きくところによると、この予告編には本編になり場面がいっぱいで貴重版なんだとか。ちょこちょこっと出てくる天知茂がゾッとするほとかっこよくて、しびれました。天知茂はいいなぁ。雷蔵の次にいい男。

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コメント

ミクシィのコミュニティ経由で書き込み申し上げます。
『血槍富士』は、冒頭、富士を背景にした街道を主要人物が歩いてくるところからワクワクします。今となっては撮れない風景に接するのも往年の邦画の楽しさですね。
『血槍』の楽しさと、そこにこめられたメッセージも素晴らしいのですが、内田作品では、歌舞伎の『恋女房染別手綱』を映画化した『暴れん坊街道』もいいですよ! 山田五十鈴の隠れた一本であり、男らしさと優しさの溢れた佐野周二、凛とした千原しのぶ、溜息がでます。

それにしても『下郎の首』もご覧になっているとは素晴らしい。
あれも人間性封殺のやるせなさが胸に迫る作品でした。
イザリのはずなのに突然立ち上がる三井弘次、ワンシーンで凄みをきかす丹波哲郎が面白いですね。

そうそう戦前の作品ですが、森鷗外原作、熊谷久虎監督『』阿部一族』が、武家社会下での葛藤と不条理を描いては出色の作品で、池波正太郎氏なども絶賛していました。先年96歳で物故された原ひさ子さんの若き日の姿も見られます。

初訪問で長文失礼しました。私も来週に、この時代劇特集を何本か観る予定です。

投稿: Ryo | 2006/09/14 01:35

Ryoさま。mixiのコミュニティではお世話になってます。そして、さっそくのコメント、ありがとうございました。

>>今となっては撮れない風景に接するのも往年の邦画の楽しさですね。

本当に。特に時代劇では「どこで撮ったんだろう」と思うような古い日本の面影が残る風景がいっぱいで、映画の雰囲気をぐっと盛り上げてくれます。当時としては当たり前の景色だったのかもしれませんが。
『下郎の首』はBSで放送していたのを、「伊藤大輔が東映で撮ったらどんな感じになるんだろう」という興味で見ました。それがとてもよくて。時代劇って古くさいだけじゃなくて、きちんとメッセージを伝えられるんだって事を教えてくれました。いいものは時がたっても新しいですよねー。

ご紹介いただいた『暴れん坊街道』『阿部一族』はぜひ見てみたいです。


投稿: あやこ | 2006/09/15 00:50

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