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2006/06/10

『にあんちゃん』@今村昌平

20060610_
『にあんちゃん』(1959年・日活)
先日なくなった今村昌平監督の追悼番組。原作を読んだのは小学生のとき。叔父の本箱にあったのを借りて読んだのだけれど(表紙が子供の絵でかわいらしかった)、この日記が書かれた背景なんてぜんぜんわからないし(ものすごく貧乏しているのはわかった)、学校で作文の見本を読まされているような気分になったのでした。申し訳ない。

昭和28年。佐賀の小さな炭坑で両親が死んで兄弟4人で生きていかざるえなくなった子供たちのおはなし。長男の長門裕之は炭坑の臨時雇いで不景気のあおりをうけて解雇、職をさがしに長崎へ。姉は唐津へ女中奉公に行き、小学生の二男(にあんちゃん)と次女は近所の家をたらいまわしにされる・・・と書けばひどい話で、実際にひどい話なんだけど、どろどろした悲惨さがないっていうのがこの映画のいいところではないでしょーか。兄弟なかよくて、上の二人は少しでも楽な暮らしを、兄弟そろって暮らしたいと一生懸命だし、下の二人は勉強もできて上のいう事をよくきく。にあんちゃんはきかん気だけど、それも気持ちはいつも先を向いているから見ているこちらが「よしっ。やれっ!」って気持ちになってしまうのです。

この頃の映画って「戦争」の影がどこかにつきまとっています。そもそも作り手が戦中派で、兵隊にいっていた監督も多いわけで、そりゃそうなります。この映画も戦争そのものではないけれど「戦後」を描いていて、それは画面のあちこち、エピソードに散りばめられています。かといって「ほらね。だから戦争はいけないのよ」と押しつけがましくはない。今村昌平はイデオロギーではなくて、社会の底辺でたくましく生きていく人たちの風景を描きたかったんだろうなって思います。だから素材としてこの原作を選んだんだろうと。
とにかく登場人物が魅力的なのだ。
兄弟4人はもちろんのこと、いつも赤ん坊を背負っている風呂屋(西村晃)。行き場のなくなった兄弟を引き取る炭坑夫(殿山泰司)。この町の人々の意識を少しでも変えようとかけずり回る保健婦(吉行和子)。気のいい学校の先生(穂積隆信)。兄弟と仲のいい屑屋のあんちゃん・・・。そしてなんといっても、お金や物(お米)を貸しては暴利をむさぼる朝鮮人のオババ(北林谷栄)。兄弟の父親の葬式でお香典を「貸した金の分」と勝手に自分の懐へ入れてしまい、その後すぐに「アイゴー、アイゴー」と泣きながら葬列に加わるのだ。すごすぎ。

みんな自分の生活に精一杯だけれど、たくましい。一生懸命勉強してがんばれば、今より少しはマシな(人間らしい)暮らしができる、家族がそろって生きていける、大きくなったら、いつかはこんな狭い所から出て立派な大人になるんだっていう希望みたいなのが底辺にあるから救われます。
いい映画でした。

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