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2005/08/30

子母澤寛『味覚極楽』

この週末に短い夏休みで東北の温泉へちょこっと出かける。そこに持っていこうと買った本だけれど、我慢できなくなって読み始めたら止まらなくなってしまった。
昭和の初め、まだ新聞記者だった子母澤寛が、華族や代議士、実業家、俳優などの著名人に「おいしいもの」について聞き書きしたもの。子母澤寛は話を聞いているとき、目の前でメモをとることはしなかったそうだ。なるほど。文章の中に、お酒を飲みながら(お茶を飲みながら)目の前で話を聞いているような気楽な雰囲気が漂っているのはそのせいなのかも。

この本に登場するのは東京に住む人ばかり。だからか、天ぷら、うなぎ、お寿司の話ばかりが出てくる。それがどれもこれもたまらなくおいしそうなのだ。

『えびは口へ入れてぷつりという歯ざわりがあって、後はとろけるようにならなくちゃいけない。ぬらぬらもいけないし、ごちごちもいけない。その加減はとても口ではいいあらわせない。
 うなぎのめそっ子の天ぷらもいいし、バナナも食わせる。いわしのピンピンしたのも結構だが、天ぷらはあれだこれだの末はやはりえびに戻るようである』

通勤電車の中で読んでいたら、どうしても天丼が食べたくなって、お昼ご飯は天丼弁当にした。まんぞく。
この本を読んでいると、食べ物だけではなく、古き日本の暮らしぶり、気風も感じられる。食べ物一つに対しても美意識があって、それが日々の暮らしの美しさにも通じている。美しさっていうのは見た目じゃなくて生きっぷりってこと。
それと痛快なのは、ほめるだけじゃなくて、おいしくないものは「まずい」、美しくない事には「おかしい」ときちんと言うところだ。

とにかく読んでると何か食べたくなる一冊。おかげで夕食は日本酒(『喜久酔』の特別純米。おいしいなぁ)に蕎麦なんつーメニューになってしまった(笑)。

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